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次世代研究インキュベータ

先端マイクロ波リモートセンシング研究拠点

宇宙から地球の地盤を観測する

――災害地域の環境を正しく把握するため、宇宙から地球の地盤をモニタリングする小型衛星とリモートセンシング技術を開発する。

研究キーワード:マイクロ波リモートセンシング、合成開口レーダ、環境及び災害監視

© iStock.com/Sirintra_Pumsopa

人工衛星から遠方の対象を観測する技術は「リモートセンシング」と呼ばれている。本研究プロジェクトは、このリモートセンシングの世界的な専門家が、機械・航空宇宙分野のエンジニアと協力して、最先端の小型衛星や航空機搭載用のセンサーを開発している。研究室は、航空宇宙システムの実験工場としての機能をもち、地殻変動や地震予知のためのマイクロ波レーダー技術を専門とする研究者が集まっている。このマイクロ波レーダー技術は、新世代のリモートセンシングの一つとして、現在注目されている。

環境リモートセンシング研究センター教授のヨサファット・テトォコ・スリ・スマンティヨは、「マイクロ波は、雲や煙、霧を貫通し、宇宙から地球表面を観測できるため、特にリモートセンシングに有用なのです」と話す。

プロジェクトの中でも中核的な研究分野となっているのが、地殻変動のモニタリングを目的としたマイクロ波リモートセンシング用合成開口レーダー(SAR)の開発である。SARは、マイクロ波信号をターゲットの方向に発射し、ターゲットによって散乱されたマイクロ波を検出する。地震や地滑りが起きた際、その前後に得られたSAR画像を比較することで、土地の移動量を測定することができる。

 ヨサファットマイクロ波リモートセンシング研究室では、航空機など、小型衛星搭載用のSARの設計・製造・較正・運用のための施設を有し、15人の研究者と25人の学生が研究に従事している。

先進的な航空宇宙施設

研究室の設備について、スリ・スマンティヨは、「センサー較正用電波無響室、小型衛星管制用地上局、小型衛星較正・測定システムなどの施設があり、マイクロ波回路やアンテナの設計用シミュレーターなど、製造装置一式も揃っています。本研究室で開発した6メートルの実証実験用大型無人航空機、JX-1もあります」と説明する。

本研究プロジェクトでは、L帯、C帯、X帯の周波数帯を用いる円偏波(CP)マイクロ波放射用SARセンサーが開発され、これらのセンサーは、大型航空機、小型航空機、そしてJX-1にも搭載されている。このCP-SARセンサーは、この種のセンサーとしては初めて、左旋円偏波と右旋円偏波との干渉を利用して、地球表面の正確な情報を得ることができ、コンパクトで軽量、低価格となっている。

「本研究プロジェクトでは、SARイメージングを基にした技術開発を行いました。これは、森林火災・地すべり・地盤沈下・火山噴火などの被害を受けたインフラと地域のモニタリングを行うためのものです」(スリ・スマンティヨ)。

現在、新たに2機の小型衛星の開発が進められている。1機目は、電波掩蔽センサーおよび電子密度/温度プローブセンサーを搭載し、地震の前兆と考えられる大気の特徴の測定を目的としている。2機目は、金メッキを施した軽量の メッシュアンテナを搭載したCP-SAR衛星である。これらの衛星により、電離層の研究が進められる予定となっている。

「ヨサファット研の小型衛星プログラムは、将来のSARセンサーアプリケーションや惑星探査にとって大きな意義を持つエキサイティングな研究です。最終的には、5機の小型衛星を軌道に乗せることを目指しています。それにより、地球規模の災害の軽減と研究に向けてリアルタイムにモニタリングを行う予定です。現在、最初のエンジニアリングモデルの建造の準備を進めていますが、フライトモデルにも間もなく取りかかる予定です」。

日本国内と海外の研究機関・企業と密接な協力関係を築いてきたこの研究プロジェクトでは、共同研究と産業連携のために、50件以上の協定を結んでいる。また、様々な政府支援による短期型・長期型の滞在プログラムへの応募を奨励しており、通算500人を超える留学生や外国人研究者が研究に従事している。

CHIBA RESEARCH 2020より)

Members

推進責任者
研究者名 役職名 専門分野
ヨサファット テトォコ スリ スマンティヨ 教授(環境リモートセンシング研究センター) マイクロ波リモートセンシング
中核推進者(学内研究グループ構成員)
研究者名 役職名 専門分野
難波 一輝 准教授(工学研究院) 集積回路
劉 ウェン 助教(工学研究院) 都市基盤工学
服部 克己 教授(理学研究院) 地球物理学、電波物理学
中田 裕之 教授(工学研究院) 人口システム科学
本郷 千春 准教授(環境リモートセンシング研究センター) 農業リモートセンシング
加藤 顕 准教授(園芸学研究科) 森林リモートセンシング、GIS

研究内容

プレスリリース

2017年6月12日 世界最小・最軽量の100kg級小型衛星・レーダの研究モデルが完成! ~高精度(mm~cm精度)で自然災害の前兆を観測~